私がチームや組織改善に臨む上でまず最初に行うのが「予定調和」を破壊することです。
破壊というと「物騒」に聞こえるかもしれませんが、真意は、「お互いが遠慮しあって程よく調和している」状態を壊すという意味です。
人が集まるとその場に少なからず、妥協と調和が生まれ、「その組織に合った」距離感が生まれます。
必ずしもそれが悪いわけではありませんが、新しいチャレンジや改革を試みようとすると「障害」になる場合が多くみられます。
これは、私の経験上、子供から大人に至るまであらゆる組織で起こる事です。
なので、私がクライアントに対して行っている事と、私が関わっている子供の野球チームに対して行っている事は実をいうと同じなんです。
特に、停滞している組織は、組織のレベルを決定づけている古参キーマンの考え方や意思に合わせて停滞していることが多く、(合わせている方々の本心とは違っても)、古参キーマンがどういう意識を持っているかによってチームのカラーが決まっています。
その中では、「雰囲気を壊さないかかわり方」というのが基本になっており、本音があっても言えない、言ったら自分に不都合が生じるというリスクを恐れて妥協することが当たり前になっているのです。
したがって、組織を向上させようとする為には、この「予定調和」を壊す必要があります。
そして、破壊に向かうアプローチの基準になるのは、「ありたい姿」である「本当はどうしたいの?」「どうなりたいの?」「今のままで良いの?」「変わったら、何が得られるの?」などの問いかけです。
ここで、上昇意欲のある人の意見をピックアップして、予定調和に慣れていた人たちの「眠れる意欲」に火をつけるのです。
ただし、本音の話し合いができていない組織の中でいきなり、対話で本音を引き出そうとしても出てきません。
自分から調和を崩すような発言ができる人はなかなかいないからです。
なので「付箋」を使って、全員の思っていることを引き出す等をしながら、徐々に前向きな話し合いに持ってゆくような工夫が必要です。
対話のテーマは、ざっくり言えば、今より良くするには?なので、今までやっていなかった新しいことをしなくてはならないという機運が少なからず出てきます。
ただし、ここで起こるであろう問題が「総論賛成、各論反対」という動きです。
どういうことかと言うと、話し合った時は「改善に向かって進む」という合意がなされたはずなのに、実際は、予定通りに進まないという状況です。
原因は、今までの予定調和のスタンダード創りに大きな影響を与えていた古参のキーマンが表立って行動するかは別として、何らかのもっともらしい理由で抵抗するからです。
つまり、「なし崩し」にしようとするわけですが、ここは引かずに「障害がある中でいかに進めるか?」に議論を移してゆく働きかけと組織の未来に向けて「絶対にひかないぞ‼」という強い意志を見せてゆく事が大切です。
そうすると、「本音では組織を良くしたい」と思っているメンバーに覚悟が伝わり、支持を集められるようになります。
また、同時に抵抗勢力である古参キーマンとも話し合う必要があります。
率直に感じていることを伝えつつ、協力を要請することです。
何らかの不満や不信感がベースになって抵抗している可能性もあるので、彼らの言い分にも耳を傾けながら、前に向かせる可能性を探ってゆきます。
これで変わってくれれば、しめたものですし、例え、変わらなかったとしても、一度火が付いた変革への流れは止めることはできず、予定調和に浸かっていた人達の中にも「危機感」を感じ、遅ればせながら、変化しようという人が現れたり、今までとは変わって前向きに進めようと言う人も出てきます。
勿論全ての人がそうなるわけではなく、中には、依然として既得権益にしがみつき、変わろうとしない人もいるかもしれませんが、そういう人はだんだん、居場所がなくなって行きます。
結果として「職場を離れる」人も出てくるかもしれませんが、「辞める」という事を殊更ネガティブにとらえる必要はありません。
人が「辞める」ということに対し、憶病になる事もあるかもしれませんが、私は組織が成長して行く段階の中で「一緒に進みたくないと思っている人が辞めてしまう」のは、ある意味仕方がないことだと思っています。
確かに、その人にも良いところもあるだろうし、居てもらうと助かることも多いかもしれません。
しかし、現状から未来へ行先が決まった以上、歩を進めることに抵抗する人は、居てもらっては困るのです。
辞めさせようとしてそうなるわけではありませんし、もしかしたら、その人に合った職場が他にあるかもしれません。
組織を今より良くし、未来につながる組織にしようとしているわけですから、ある程度人が入れ替わるのは致し方ないのではないでしょうか。
勿論、いろんな考え方があり、緩やかに穏便に進めるという方法もあると思いますが、私たちが思っている以上に環境の変化は速く、より一層迅速に対応できる体制が求められてゆく中で、変化に対するスピード感は大切な要素ではないかと思います。
ただし、ドラスティックな改革は、内部だけでは進めようとすると「利害関係等」デリケートな問題があり、進めにくい側面もあるとか思います。
そんな時は、ぜひ一声おかけください。
今回は組織の成長を止める予定調和についてお話ししました。
次回は、プレイングマネジャーの部下である驚くべき「若手の気質」に焦点を当てたいと思います。
彼らはどういう価値観を思って生きているのか?を一緒に考えてみましょう。