Z世代との対話に苦しむリーダー達

私の仕事は、一言で言うと「コミュニケーションを改善して組織のパフォーマンスを向上させる仕事」と言う表現に集約されます。

なぜこの分野に注力しているかというと、私はコーチングの専門家であり、コミュニケーションを扱うことが本業であるというだけでなく、組織活性化に向けてここが「ボトルネック」だと考えているからです。

近年、コミュニケーションは多様な要素が絡み合うことで複雑化してきました。

本当の意味での「意思疎通」が難しくなったと言えます。

また、日本がインターネットやAIの台頭により世界規模で起こった変化に適応できていないことも大きな要因です。

従来の「忠実性」や「勤勉性」だけでは、通用しなくなっているのは実感としてお感じになられているのではないかと思います。

しかし、理屈ではわかっているけれど、「中々変われない」というジレンマも同時にお持ちなのではないでしょうか?

そんな古いスタンダードが未だ色濃く残る組織において、変化を促すきっかけとなっているのが
日本の成功を知らない世代です。

時に象徴として語られるのがいわゆる「Z世代」です。

彼らの登場によって働き方改革や若手の採用育成に関する法改正が行われ、それに合わせた教育やコミュニケーション系の研修も増えています。

もちろん、彼らの台頭だけが理由ではありませんが、組織においてもフラットな「対話」を重視する風潮が強くなっています。

それ自体は歓迎すべき事であると思いますが、どこか、制度やルールばかりが先行して「本質」に届いていないようにも見えます。

私は世代で一括りにするのは好きではありませんが、Z世代の最大公約数的な特徴として語られる「共通項」は確かにあると思います。

それは、「無駄を省いて効率的に人生を考えてゆきたい」というキャリア志向と「年配者の過去における成功体験は信用しない」というマインドです。

日本経済の弱化や天変地異の頻発、そして、彼らが子供の頃から慣れ親しんでいるロールプレイングゲームの影響も大きいのかなと思いますが、何よりもリーダー達の「今の姿」が魅力的に見えないことが最大の要因であると思っています。

また、もう一つ彼らの特徴として考えられるのが表面的なコミュニケーションはできるが、中々本音を語らない用心深さです。

指示待ち世代と言われる事もありますが、これは、彼らが価値として認めていないものを仕事として押し付けられたくないという心理が働き、よけいなことを発言せずに卒なく、こなす事に注力した結果とも言えます。

だから、1on1では特に不満がありそうな感じがしなかったのに・・・
いい感じで話してくれていると思っていたのに・・・
「突然辞めちゃった」という事態が起こるわけです。

以上の事から、ある意味、Z世代は「遊び」の価値がわからない世代と言っても良いかもしれません。

ここで言う「遊び」とは良い意味での「無駄」です。

彼らのキャリア志向は彼らの主観で成り立っている以上、その視野に入っていない「経験」や「選択」は無価値であるように映ってしまうわけですが、

それだと嫌だけれど、気は向かないけれど、義務感しかなかったけれど、「やってみて初めてわかった」「視野が広がった」「やっておいて良かった」と言うような経験はできません。

でも、本当の意味で「はりぼて」じゃない「骨太」のキャリアを築くためには、一見「無駄だと思う事」をやってみるのも大切ですし、やった事によって「違うキャリア」が見えるきっかけになる事も多いのです。

なぜなら、全て「自分の希望通り」に周囲が動くなどあり得ないし、「理想の未来」は「経験」「体験」によって変わって行くものだからです。

さらに、何より無駄だと思う事に「やってみよう」と思い、その中に「価値」を見いだせる能力も非常に大切であると思います。

いや、私はこれこそが「最も大切なこと」と言って良いのではないかとさえ思います。

従って、リーダー達は「遊び」つまり「無駄」の価値を語れないといけないし、「無駄の価値」を反映した生き方(活き方)を部下に見せられないといけないわけです。

あるべき論を説いても「今のあなたの姿を見ていたら、説得力はないよ」と感じさせたら、いくら立派なことを言っても無駄になってしまうどころか、還って信頼を失う要因になってしまいます。

では、具体的にどうしたら良いのか?ですが、ポイントは三つだと思っています。

一つ目は、私は部下の描くキャリアに対し、一緒に深掘りし、「視野」を広げてあげる事。

二つ目は実際に部下の行動に対し、成長を「具体的な言葉」でフィードバックしてあげる事。

最後は言っている事に説得力を持たせる「お手本としての生き方(活き方)」をする事、つまり、自分のチャレンジを見せ、苦悩や失敗を見せ、「自分も闘っている」姿を見せる事だと思っています。

しかし、日本のリーダー達は「失敗予防」に縛られ、雁字搦めになっているように見えます。

私はそんなリーダー達を解放して、「俺も悩んでいてさ、でもこうやってみようと思うんだ」「最近失敗しちゃってさ。でもおかげでわかった事があるんだよ」「今、困っていてさ、こうしたいんだけれど助けてくれない?」など、横から語れるリーダーをたくさん輩出したいと思っています。

お読みいただきありがとうございました。