「上司の関わり方」が6割

1月から、大手精密機械メーカーのプレイングマネージャー10名に対し、「コーチング」を実施しています。

この人たちは、どちらかと言うと上司から「評価が低かった」方々です。

上司から出された課題に対する、アクションの実行をサポートしてゆくのですが、一人一人と向き合い、じっくり話しを聞いてみると「やっぱりな」と改めて気が付いた事があります。

それは、今の上司が改善して欲しいと認識している「問題」はその人そのものの問題と言うよりも「上司」がどう関わったか?という事によって生まれるケースが多いという事です。

例えば、現在の上司に「もう少し、リーダーとして主体的に行動をして欲しい」という課題を与えられたあるプレイングマネージャーは、以前の部署では長きにわたり、研究職のスペシャリストである上司に言われた事を実行する事だけを求められてきました。

つまり、「君の意見などいらない、私の指示通りにやってくれれば良い」という事を言われ続けてきたという事です。

ご本人は、自分をあたかもモノであるかのように扱われていると感じた事でしょう。

また、別のプレイングマネージャーは、ホウレンソウなど業務上必要なコミュニケーションが弱いという評価を受けていますが、以前の上司は自分の業務遂行に埋没し、全くと言ってよい程、部下の仕事を「見ない」人であったので、上司に信感を抱き、積極的にコミュニケーションをとろうという意識が薄くなってしまったそうです。

大人ですから、全てが上司の責任とは言いませんが、上司の部下に対する影響力は大きく、関わり方次第では今の問題は「発生」しなかったように感じます。

本当の問題は何処にあるのか?

今回10名の方々と接してみて私が本当にその人自身に本質的な問題があると感じた人は「4人」です。

10名中6名は過去現在における上司との関係性に問題があると思っています。

つまり、6名は上司次第で今回の対象にはならなかった可能性があるという事です。

これは本来、活かされるべき人間が活きていないという事になり、会社としては「目には見えない」大きな損失です。

では、このようなミスマッチが起きないようにするにはどうしたら良いのでしょう?

ひとつは、「部下を持つ」べきでない人を上司にしないという事です。

これは、プレイヤーとして優秀であるからと言って「優秀な上司」になるとは限らないという認識に立つという事です。

たしかに「できる人」がリーダーとして育ってくれれば、それに越したことはないですが、先ほど挙げた研究のスペシャリストである上司のように、どうしても「向かない人」も一定数いるのは事実です。

なのでそういう人は、思い切ってその任からといてあげた方が「本人」にも部下の為にも良いのです。

評価や給料にも関連する事なので、簡単な事にできる事ではないかもしれませんが、利益と損害のバランスを考えれば、その人を上司に置いておくよりも、プレイヤーに徹してもらう事の方がはるかに「益」を産むのではないかと思います。

あともうひとつは、上司が部下に対する「見方」を変える事だと思っています。

これも言うのは簡単で、なかなかすぐには難しい事かもしれませんが、自分より部下は「下」であるという認識を改めるという事です。

一般的に上司の方が「熟練度」が高いため、どうしても「部下」に対しては「上」から見がちになりますが、「自分より下」と言う見方は、部下のモチベーションの低下や成長の鈍化に繋がります。

「下」ではなく、ともに「チームの目的、目標を実現する」仲間なんだという見方に変える事が出来れば、「損」は「益」に大きく転換できるでしょう。

「人は理屈ではなく、感情で動く」という事は、私の研修でも強調して伝えている事ではありますが、関わり方次第で、 やる気の向上やコミュニケーションの活性化、関係性の向上に結び付くのであれば、結果として、上司である自分の仕事も楽になるはずです。

会社で働いている人がどんな関わり方をしているのか?がパフォーマンスに大きく影響するという事は、グーグルが証明し、「心理的安全性」と言う言葉とともに認知されるようになってきました。

であれば、後はいつから、どこから始めるかです。

これは、ある意味会社の「体質改善」でもあるので「変化」が見えるまではそこそこ時間がかかりますし、進捗に対しては、一進一退があるはずです。

変化に抵抗する勢力に妨害を受けるかもしれません。

でも、これからは今まで以上に「人」を活かせる企業が生き残り、発展をしてゆくと私は信じています。

現状維持を続け、じり貧になって後で後悔する前に、早めに手を打つ方が得策だと思うのですが・・・。

今日は、ある企業の例をとってお話をしましたが、同じような問題は日本中至るところにある組織、会社にあると思っています。

良かったら、この機会にご自身の会社も「上司の適正」や「上司の部下に対する関わり方」について見つめ直して頂ければ幸いです。