感想が言えない日本人

現在、私が提供している教育の大半は、研修とコーチングをサンドする形で半年間走るプログラムが中心です。

研修と研修の合間に個別コーチングを実施しているのですが、研修を受けた方との最初のコーチングでお聞きするのは研修の感想です。

これは、どんな感想を持ったのか?その人なりにどう感じたのかを知ることがコーチングを提供する上で大切な事だからです。

でも、大半の人が「感想」を話してはくれません。

どういうことかと言うと、どんな研修だったかを説明したり、学んだことを説明するのです。

こういう「現象」に遭遇すると私は改めて「危機感」を強く抱いてしまいます。

なぜ、感想が言えないのか?という事ですが、私なりに推測すると、常に「正解を言う事」を求められて、長い事、過ごしてきたからではないかと感じています。

私の提供する研修は、もちろん知識やスキルを学んでいただくという要素もありますが、なぜなのか?何を?どのようにするのか?を自分で「考える時間」を多く設定しています。

したがって、何かしら「感じる」事があるはずなのですが、なかなか、「感想」は出てこない。

自分の感想はないのか?

では、本当に「感想」はないのか?と言うとそうではないと思います。

「そんなの机上論だろ?」
「出来の良い部下の場合はそれで良いかもしれないけれど、あいつには無理」
「そんなことしている時間はないよ」
など、心の中でつぶやいた事は少なからずあるはず。

でも、いざ感想を求められるとお門違いな返答をしてしまうのは、単に感想を言う「習慣」がないからだと思っています。

したがって、感想を言ってもらえるようになるには、 繰り返し、しつこく「感想」を求めてゆく以外にないと思っています。

感想や考えを求められた時に、自動的に「正解」に直結するようになっていたシナプスを、感想を答える訓練を繰り返す事で「自分の心」につなぎ直すという事です。

例えば、「今言ってくれたのは、学んだことですね。感想を言って。感想を」と言う風に食い下がるという事です。

こういう事を何回か繰り返すことで、自分の抱いた感想や考えがまず第一に頭に浮かぶようになり、問題なく、抵抗なく、感想が言えるようになるはずです。

感想にこだわる理由

私がここまで「感想」を言ってもらう事にこだわる理由は、「感想を言う」事が人の感情に興味を持つことに繋がるからです。

なぜなら、「心に感じたことや思ったこと」を話すのが「感想」ですから、感想を言えるようになる事は自分の「感情」や「思い」に興味が持てるようになる事でもあり、結果として、他人の感情にも興味を持つことに繋がります。

そして、感情に興味を持てるようになったら、他人との関わり方も変わってゆくはずだからです。

私たちは長い間、感情と仕事を切り離す事を求められてきました。

心を持った人間であるにも関わらず、ロボットのように感情を軽視して働いてきました。

それでも成果が上がった時代は良かったかもしれませんが、「物欲」に人を動かすパワーが薄れた今、組織の中で「人を動かす」のは「感情」です。

人のモチベーションを上げたり、関係性を強くするのは「心」に対するアプローチです。

だから、どういうタイミングでも良いです。
会議でも、ミーティングでも、仕事に対してでも。
感想を求める。

まずは、身近にある事に対し、「感想」を言える環境を作っていただけると、業務のやりとりだけで人が動くような無機質な組織ではなく、躍動感のある組織創りに繋がってゆくのではないでしょうか。

まずは自分からという事で、今回の記事を読んでどんな「感想」を持ったか?心の声に聴いてみてください。