部下の主体性を覚醒させるには③

今日は「自信の特性」についてお話します。

それは、特性がわかっていないと部下育成についても取り組むべきことが理解できないからです。

私が考える「特性」としては以下の通り4つが挙げられます。

  1. 自信は「主観」である
  2. 自信は部分的で良い
  3. 揮発性と積み立て
  4. 能動的獲得と受動的獲得

まず「1」の「自信は主観である」ですが、これは読んで字のごとく、自信は「自分がどう思うか?」によって決まると言う事です。

これは前回の「成長実感」にも関係する事なのですが、同じ状況にあったとしても人によって、受け取り方が違い、出来事や物事のポジティブな一面を見る習慣があるか、それとも、ない物や得られなかった事など、ネガティブな一面を見るのかによって「自信」の有無が変わってくるという事です。

どうしても「得られなかった事」もっと言うと「失敗」から学ぶという意識が強い私達ですが、こういう意識が「自己否定」に繋がり、「自信がない」と感じる状況にも繋がっているという事を私たちは真剣に考える必要があります。

そして更に言うと、上手くいかなかった要因は「分析」をしますが、上手くいった事については、それほど「分析」をしません。

実は上手くいかなかった事よりも、上手くいった事の方に「成長の糧」がたくさんありますし、何よりも自分が成し遂げた事に対する「根拠」を曖昧にせず、財産や武器にすることができます。

これはスポーツの世界でもよく見られることで、欧米のトップコーチは、選手のポジティブな面に目を向けさせ、なぜ上手くいったのか?できたのか?を認識、理解させて行くアプローチをします。

私が好きなTV番組でNHKの「奇跡のレッスン」という番組があるのですが、欧米のトップコーチが日本の中学生達に「1週間」コーチをする事でどんな変化があるのか?を観る内容になっています。

ここでも共通しているのは失敗を指摘して改善するのではなく、「できた事」「わかった事」「うまくできるようになった事」に目を向けさせるアプローチをすることです。

例えば、良いプレイがあった時にプレイを止めて、「今の良かったよ。なんでそうしようとしたの?」と選手に問いかけるのです。

そうすると選手は「自分の選択」について考え、自分なりの「答え」を導き出します。

コーチがこういう働きかけを繰り返してゆく事で選手たちは自分で出した「答え」の集合体が自信やスキルとなり、積もり積もってゆくので、同じような場面になった時にいつでも引き出す事ができ、有効な「再現性のある」プレイ機会が増えるという事です。

私達は「できる」「わかる」「うまくできるようになる」事によって成長を認識できるわけですが、このように自分の意識を良い所に向けさせ、自信を育んでゆこうとするのがトップコーチの考え方です。

これは「仕事」にも当てはまる事で、上司も部下も、失敗よりも「できた事」「わかった事」「うまくできるようになった事」にに目を向ける習慣が出来れば、部下は自分を成長させるためのアプローチを身に付ける事が出来ます。

しかし、現実問題として「仕事」に前向きになれず、ただ給料をもらうために仕方なくする事であると部下が考えているとしたら、「否定」からの改善という従来の「育成」によってもたらされた結果であると言えるかもしれません。

したがって、私たちが考えるべきことは、私たち自身が自分の行動も含めて、ポジティブな側面に目を向けてゆく事、そして、部下や後輩にも目を向けさせてゆく事です。

そのためには、まずリーダー達が出来ていないことを指摘してすぐ行動を変えさせたいという誘惑と、目先の「対処的成果」を手放す勇気を持つ必要があります。

これは、私たち全員が持っていると言っても良い程強烈な欲求であり、「習慣」ですが、結果として「自信喪失」に繋がり、誰も幸せにしていないという事を強く認識する必要があります。

今日は「自信は主観」であるという話の中で「否定からの改善」よりもポジティブな面に目を向けてゆくというお話をしました。

次回は、「自信は部分的で良い」についてお話ししたいと思います。