「日本の組織でコーチングを機能させるには?」

欧米から、日本にコーチングが導入されて30年近く経とうとしています。

以前と比べれば「コーチング」と言う「単語」自体の認知度は上がったかもしれませんが、どれだけ浸透しているかと言うと「疑問符」が浮かんでしまいます。

なぜなのだろう?と長い間考えてきましたが、コーチング発祥の地である欧米人と日本人との違いが少なからずあるからではないかという考えに至りました。

違いについては、あくまで私見ではありますが、だいたい以下のようなものかなと思っています。

1. 自己開示に対する抵抗感が強い

日本人の中には、自分の事を話すのは恥ずかしい、本音をなかなか話せないという方が多いように感じています。

コーチングは自分の本心を話さないとなかなかうまく機能しません。

欧米はクリスチャンが多く、子供のころから教会で懺悔する習慣があります。

なので、言いにくい事や思ったことを率直に話すという事に抵抗感が弱いのです。

日本人は自分の心の内を話すことに抵抗感が強く、それがコーチングにフィットしづらい状況を作っている要因の一つではないかと考えています。

2. 横並びを尊ぶ

日本の社会は、「個性」よりも「人と同じである」ことに価値を見出してきました。

これは「稲作」という集団行動が必須の穀物栽培で、日本と言う国が成り立ってきた事や江戸時代の五人組から始まった「相互監視システム」が影響しているのではないかと感じています。

人と違うという事に対し、不安を抱いたり、疎外感を感じたりすることが多いので何かやって、他者から否定をされる事を何よりも恐れているように感じます。

3. 基本的に受け身である

リスクを負って、何かを得るよりも「ミスをしない」ことに価値を感じている方が多いように思います。

答えがある事に臨む方が安心であるので、自分で「考えて」「決めて」「実行に移す」事はできれば避けたいという風に思うのではないでしょうか?

なので、「言われたことはまじめに取り組む」がそれ以上は・・・・という方が多いようです。

4. 考える事が苦手

これは研修等でいつも感じている事ですが、そもそも、本来の目的とかを突き詰めて考える習慣がなく、必要なことを暗記して答える機会が多かったため、「考える」事に慣れていないという印象があります。

「3」にも関係するのですが、自分で考えるよりも「言われたことをやる」方が楽なので、突き詰めて考える事がなく、途中で思考停止してしまうわけです。

5. 「決める」事を避け、曖昧を好む

何か提案を受けた時に「検討します」と言う言葉が返ってくる事が多いのですが、経験上「本当に検討する」事はなく、事実上の「断り」文句であることが多いのが実情です。

その気がないならば、相手のためには「断る」方が賢明であるにもかかわらず、はっきりさせることを避ける習慣があるように思います。

ざっと、日本人にコーチングが機能しにくい理由を挙げてみましたが、実は各項に共通している事があります。

それは、「自己防衛意識」です。

つまり、究極の理由は、自分を守ろうとする意識が強いため、何か今までにない新しいチャレンジをして、うまくいかなくて傷つくより「今のままで良い」と思う考え方が強いという事です。

結果、精神的に「楽」である事や「安心」「安全」である事が上位の価値観として根付いているために、コーチングが機能しにくい状況になっていると考えられます。

しかし、最近はコーチングを提供する教育機関も増え、「コーチング」に触れた方も増えてきているのも事実ですし、以前と比べれば、認知度は上がってきております。

さらに、言うと閉塞感のある組織を変えてゆくには、今までにないアプローチが必要であり、そこには「個の能力」を「個性や強み」を伸ばす働きかけ、そしてチームワークを高めてゆくコーチング的なアプローチは必要ではないかと考えてます。

では、どのように日本の組織にフィットしにくいコーチングをどのようにカスタマイズしてゆけば良いのでしょう?

私は「段階的に自由裁量を増やしてゆく」ソフトランディング的なフローを作る必要があると考えています。

それは、多くの日本人にとって「自由」はある意味苦痛であり、制約がある方が安心できるという側面があるからです。

なので、まずは安心領域を作ってあげて、そこから始めるという事です。

そして、少しずつ、「自由度」を増やしてゆき、自信を育みながら「自主性」「主体性」が発揮できるように導いてゆく。

あたかも、グラデーションで色が徐々に変わってゆくような感じです。

具体的には、最初はある程度の「答え」を提示して、その中で考えさせる。

例えば、「野球」で考えるならば、本当は自分で課題を見つけて、トレーニングして欲しいとところですが、こちらで課題であると思う所を提示して、そしてトレーニング方法をいくつかの候補から選ばせ、実行させるという流れです。

次に、やってみて、結果が変わったのか、変わらなかったのか?

どちらに転んでも、「うまくいったこと」「できたこと」「その理由」を考えさせる。

そして、次の課題を考えさせ、トレーニング方法を選ばせる。

こうやって、教えながら、結果を振り返り、少しづつ、自分で考え、決めて、実行に移させてゆく事で、主体性が徐々に身についてゆきます。

日本人は古くから海外から輸入したものをカスタマイズして「最適化」するのを得意としてきました。

私は、コーチングでもそれができるのではないかと考えていますし、死ぬまでに「日本人に合ったコーチング」を体系化して遺したいという野望を持っています。

何が一番良いかの「答え」は見つからないかもしれませんが、探求心を持ちながら、精進を続けてゆくつもりです。

なんか、面白そうだな、興味がわいたなとお感じになったら、お声をおかけ下さい。

一緒にジャパニーズコーチングを作りましょう!!