「専門知識」を凌駕する「リーダー能力」の可能性

昨今、就職を控える学生の「専門職志向」が強くなってきたと言われています。

また、こういう傾向に合わせて人材配置をしてゆこうという企業も増えているそうです。

この背景には若者の「就職」と言うものに対する考え方の変化があります。

産労総合研究所行った調査では、入社に際し、45%が「できるだけ永く、その会社に勤めたい」と答えたのに対し、それ以外は滞在予定年数に違いはあっても「転職を考えている」が55%という結果になったそうです。

企業に一生務めるわけではないので、専門性を磨いてゆきたいと考える学生が増えているという事ですが、また、それと反比例するように、会社でマネジメントをする立場につきたいと考える人は25%ほどになっており、年々下降の一途だそうです。

割に合わない管理職になるよりもスペシャリストの方が将来明るいと考えているのかもしれません。

しかし、本当にそうなのか?と言うと私自身は疑問に思っています。

自分の専門分野を作ってゆく事は良い事であると思いますが、今後もかつてないスピードで様々なイノベーションが起こってくることが予測される中、「果たしてその専門性は価値として残ってゆくでしょうか?」という事も考えて欲しいと思っています。

技術の進歩は加速度的に早くなってきていますし、それに伴い、必要な「知識」もどんどん変わり、増えてゆきます。

また、それと逆行して人間は加齢によって、パフォーマンスの低下も起こってきます。

「一つの専門性」で勝負できる人はほんの一握りになるのではないかと思いますし、そういう意味で「マネジメント力」を二つ目の大きな武器、いや最終的には自身を助ける「必殺技」にしていただきたいというのが私の思いです。

なぜなら、「人間関係にまつわる事」は人類に「集団」と言うものが形成されてから、「不変」であり、間違いなく未来永劫続いてゆくからです。

そして、さらに今後は日本でもジョブ型雇用が増えてゆく事により、「マネジメント能力」も専門化してゆくのではないかと考えられます。

今までの日本のように「マネジメント」をプレイヤーとしてのキャリアの延長線上として考えるのではなく、独立した専門性の高い能力として認められてゆくという事です。

業種関係なく、チームのパフォーマンスを向上させる事ができる能力は、多少のマイナーチェンジは必要であったとしてもニーズの多い、「魅力的な能力」となって行くのではないでしょうか。

それを表す一つの例として、ご紹介したいのが、以前、私のリーダー研修に参加されたある大手金属企業の課長さんのお話です。

その課長さんは、研修後、「学んだことを職場で試してやろう」と意気込んで戻ったら、すぐに人事異動があり、今まで自分がやってきた事業とは関連性のない子会社に出向することになったそうです。

最初は「マジか!!!」と思ったそうですが、知らなかったからこそ、開き直って部下に対し、「色々教えて!!」と言う謙虚な姿勢で接し、部下の考えや話をよく聞いた上で物事を進めるようにした結果、驚くべきことにチームの業績は飛躍的に伸び、しまいには、前任リーダーの時と比較して約20%も売り上げがアップしたそうです。

因みに前任リーダーは業界20年のベテランで「良く知っている」為、自分の考えで指示を出し、マネジメントを行っていました。

「自分が良く知っている、できる」よりも、業界の事は知らなくても、部下の活かし方に長けている方が成果を出せた良い例です。

全てこのお話のようにはいかないかもしれませんが、「リーダーとしての能力」を高める事は「業務の専門性」を超える可能性があります。

今は「大変で割に合わない」と思っている事が、自分のかかわり方次第で自分を楽にし、チームメンバーも、ひいては会社もハッピーにできるのです。

さらに、定年後も「時間」ではなく「自分の価値」を売ることができます。

これから、弊社では年末にかけてプレイングマネージャー向け研修が増えてゆきます。

一人でも多くの方に「リーダー能力」の魅力を伝えつつ、私自身も学ぶ姿勢で謙虚に貪欲に臨んでゆきたいと思います。