部下の主体性を覚醒させるには②

前回、部下の主体性覚醒には段階があり、まずは「自信」を育てる事が第一優先課題であるとお伝えしましたが、「自信」の育成と言う話に入る前に、今日は「自信にまつわる錯誤」についてお話ししたいと思います。

それはこの「錯誤」が「自信の育成」を考える上で「知っておくべき」最大の障害になるからです。

「錯誤」を取り上げようと考えたきっかけは、先日、カンパニーコーチとして関わらせていただいているIT企業で実施した新人研修です。

研修は参加者にいろんな視点を提供し、考えさせ、意見を出させることに主眼を置いた内容だったのですが、その中で「不安」について取り扱った時に「知らない事が多い」「経験がない」という事と「自信がない」という事を結び付けて考えている参加者が多かったのです。

新人ですから、知らない事が多い、経験がないのは当たり前の事なのに、それに対し、「自信がない」と答えてしまう人が多い事に対し、私は危機感を覚えました。

これはこの新人たちに限ったことではなく、「自信がない」ということとその「理由」として挙げている事を関連付けて考えてしまうという錯誤は私たちの日常でも良く起こる事です。

だから、まず「部下の自信を育てる」前に、部下が陥りがちな「勘違い」を押さえておきたいと考えました。

そうする事で部下が自信喪失状態に陥った時に適切な対応ができるようになるからです。

「結果」が出ない=「自信がない」ではない

本当は関連性がないのに関連付けて考えてしまう事は私たちの日常でもよく起こります。

例えば、期待通りに結果が出ないと自信を失ってしまうのもこの類です。

何か行動を起こしたことに対し、期待通りに結果が出ないと「自分はダメだ、能力がない」と結び付けてしまいがちですが、「期待した結果が得られない」=「自分はダメだ、能力がない」ではないのです。

このように短絡的に結びつけてしまうのは過去私達が受けてきた教育が大きく影響しているので「根が深い」問題なのですが、「行動の結果」と「人格や能力」は切り離して考えるべきですし、部下を持つ人は「意識」して切り離す訓練をする必要があります。

自信にまつわる錯誤を解く

自信とは「自分を信じるに足る存在である」と認識する感情ですが、何を持って「自分を信じる」か?について真剣に考える機会は少ないと思いますし、非常に曖昧です。

したがって、これを明確にする事で自分を必要以上に卑下する「錯誤」とオサラバできますし、必要以上に苦しむ部下を救う事が出来ます。

では、何を持って自分を信じるか?ですが、「結果」のみですと苦しくなります。

なぜかと言うと、結果については望み通りになる事よりも、ならない事の方が多いからです。

つまり、「結果」は自分でコントロールできません。

勿論「望む結果」が出れば、うれしいですし、自信を与えてくれるのは間違いありません。

しかし、結果を出す事しか、自信を得れないのであれば、自信を持てる機会は非常に少なくなってしまいます。

なので、「結果」以外のところに自分を信じるに値する要素があるんだという事を認識する必要がありますし、上司は部下に対し、認識させる働きかけが必要です。

何を持って自分を信じるのか?

では、何を持って自分を信じるのか?という事ですが、私は「成長実感」であると考えています。

言い方を変えると「結果以外の行動によって得られたもの」に目を向けてゆくという事です。

行動して得られた事とは「行動を起こしたという事実」や、それによって「わかった事」「気づいた事」「得た事」です。

つまり、失ったものより、得たものに目を向けるという事です。

自分の行動が無駄になったと認識することが「自信喪失」に繋がるわけですから、決して無駄ではないよ、やったからこそ、わかった事があるという風に考える事、また、部下にもそうやって目を向けさせることが何より大切であると思っています。

成長とは「わかる」「できる」「うまくできる」が増えてゆく事です。

行動を止めなければ、「わかる、できる、うまくなる」が加速し、成長を自覚できれば「自信」も獲得できます。

上司には部下の成長を促進する役目があります。

言い方を変えると「部下の自信を育てる」事です。

結果のみでその人を見るのではなく、成長に目を向けて、成長を自覚させてあげられるリーダーが増えれば、何かにつけて「自信がない」と思ってしまう部下たちを数多く救う事が出来ます。

結果に囚われず成長に目を向ける習慣創り。

私はこれを企業に根付かせてゆきたいと考えていますし、そんなリーダーを数多く育ててゆきたいと思っています。

次回は、「自信の特性」についてお話します。