日本人に合ったコーチングを創る②

「自信を分解する・・・自己肯定感と自己効力感の育成から始めるコーチング」

前回は「日本人に合ったコーチング」を創るために「自信」を育てる事から始める必要があるというお話をしました。

今回はその続きになります。

まずは「自信」についてですが、自信は「自分で獲得する」と言うのが一般的な考えではないかと思います。

しかし、一方で自分で獲得する事が「難しい」人も多く存在するのも事実です。

特に人の目を気にし、「比較する、される」機会が多かった日本人にはその傾向が強いように感じます。

自信を育てる話の前に「自信とは何か?」を明確に理解する必要がありますが、辞書等によると自信とは「自分の能力・価値や自分の言行の正しさなどをみずから信じること。また、その気持ち。」とあります。

つまり、自信のない人とは、どう人なのか?と言うと「自分に価値や能力がない」と思っており、「自分の言葉を信じられない」人という事になります。

言い換えると、「自己肯定感」や「自己効力感」が低い人達であると言えます。

「自己肯定感」とは「自分を存在価値がある人間」であると感じる事であり、「自己効力感」は「自分はやろうと思ったことがやれる」人であると感じる事です。

この二つが低いと「自信がない」と言う認識になるわけです。

したがって、対象となる相手の自信をつけるには「自己肯定感」や「自己効力感」を高めてゆく事を意識しながら、関わってゆく必要があります。

自己肯定感、自己効力感を育てるコーチング

まず、今日は自己肯定感を高めるアプローチについて考えたいと思います。

自己肯定感を高めるには「自分の存在」が他者に良い影響を及ぼしている事を認識させる事が必要です。

その人の持つ長所や強みを「素直に」理解させることです。

良く研修で「自分の長所と強みを20個挙げて」という課題を出すことがあるのですが、残念ながら、20個書ける方はほとんどいません。

これは長い間「謙虚と卑下」を混同してきた結果と言っても良いのですが、褒められることに「素直になれない」私達の反応に原因があります。

私たちは褒められると良く「大したことない」「そんなことない」と言う言葉を発し、「いい気にならないよう」「調子に乗らないよう」戒めてきました。

しかし、見方を変えると「自分を否定する」言葉をを長い事自分に吐き続けてきたとも言えます。

結果、「自分は大したことない」と刷り込ませてきたわけです。

本当はそんなはずはないのに「自分に対する評価」が低くなってしまうのです。

私は「本心から自分を駄目だと思いたい」人はいないと思っています。

なので、自己肯定感を育てるにはこの呪縛から、解く必要があります。

では、具体的にどうしたら良いか?という事ですが、経験上、有効なアプローチの一つに「過去への旅」があります。

具体的に言うと「自分史」を書くという事。

私はクライアントとコーチングを始める際に「自分史」の交換からスタートします。

これには三つの狙いがあります。

一つ目は、私が先生ではないという認識を持ってもらう為であり、自分の価値観がなぜ、どのように形成されたのかを知ってもらう為です。

「自分史」は自分の偉大さや華やかな経歴だけを書くのではなく、むしろ、逆にある「苦しみ」「悲しみ」「挫折」等を洗いざらい、自分の記憶がある範囲で書き出すことが大切です。

なぜなら、「現在の価値観」が形成された原因となる出来事が「そこには」あるからです。

出来事を「乗り越えるために」自分なりの解釈をして私たちは生きてきました。

この解釈は、生きてゆく上で「自分を納得させる」為に必要なものでしたが、ある意味、「自己肯定感」「自己効力感」が低い原因にもなっている可能性があります。

したがって「自分史」を交換する事でコーチは上にいるのではなく、同じように悩み、苦しみ生きてきた人間である事を洗いざらい見てもらい、また「私の自分史」を手本にして素直に自分を振り返ってもらう事で自分の価値観が形成されたプロセスに目を向けてもらうのです。

更に言うと、今はあなたを応援するために「横にいる」のだという事を分かってもらい、自分から「腹を割って付き合う覚悟があるよ」と言う姿勢を見せる事で、相手が自分の事を話しやすい環境を創るためです。

二つ目の狙いは、自分に少なからず自信があった時、自信を持つことができた出来事、経験を思い出してもらう為です。

大きな出来事でなくても、周囲の人から「受け取った言葉」の中に自分の価値を表す「言葉」があるはずで、それを記憶の中から「発掘」し、「埃を掃って」再び、光を当ててもらいます。

そうすると「そういえば、こんな言葉をもらったなぁ」「こんな風に言われてたな」「このころはこうだったな」と自分の価値を感じていた自分を思い出せるのです。

その上で改めて「長所と強み」を書き出してもらうと、今まで書けなかった、忘れていた自分の長所や強みに目を向ける事が出来ます。

今、もしかしたら「自覚」できていなくても過去に発揮した長所や強みは、その人が本来持っているものであり、これから、自分を取り戻す上で「資源」になります。

こうして、まずは自分の存在価値に目を向けてもらい、「素直に」「正当に」自分を評価をしてもらう事からスタートすると「自己効力感」である「やろうと思ったことがやれる」にシフトしやすくなります。

また、書き出した「長所」や「強み」はいつでも、見れる状態にしておくとさらに良いと思います。

人の感情は一定ではありませんから、いつしか。ダークサイドに落ちた時に「戻れる場所」を作っておけば、深く沈むことはなくなります。

そして、三つ目の狙いは、いろんなことがあって、今まで生き抜いてきた自分を認めてもらう為です。

今まで多くの人と「自分史」交換をいたしましたが、平々凡々、平坦な人生を送ってきた人はおらず、ギャップが大きいか小さいかは別として山あり、谷ありの人生を皆潜り抜けて、今日を迎えています。

このことは、当たり前のようで実はすごい事なのです。

私の古い友人の中にも若くして、自らの人生に幕を下ろした人たちがいます。

まずは、純粋に今日まで「がんばってきた自分」を認める事から始めて欲しいと、いつも、クライアントには伝えています。

今日は「自己肯定感」を高める方法についてお話ししました。

「自己効力感」向上へのアプローチについてはまた次回、お話ししたいと思います。