研修の生産性を高めるには➀

研修において「学び」を得る事は重要ですが、学ぶだけでは、その後の成果に繋がりません。

学びを実践の場で活かすことによって、初めて研修に意味が生まれます。

そんなことは言われなくても「百も承知だよ」と思うかもしれませんが、実際には「研修の時は良かったんだけど、職場に帰ったら、研修前の状態に戻ってしまった」と言う話を良く耳にします。

そのくらい研修の効果を持続させるというのは難しい事なのです。

また、学びや気づきを行動に移してもらう為に仕掛けを作れば良いじゃないかという事で、アクションプランを講座に組みこんだりしますが、それでも残念ながら、大半はいつの間にかなし崩しになってゆくケースが圧倒的に多いようです。

なぜ、成果を生まない研修になってしまうのか?と言うと、主に下記のような理由が考えられます。

  1. アウトプットの場がない
  2. アクションがフォーカスされていない
  3. 参加者にとって学ぶ動機が弱い
  4. 確認とフォローがない

他にも

  • 「研修の目的」が明確でない
  • 役職は一緒でも抱えている課題レベルが参加者によって異なっている為コンテンツのフィット感が薄い
  • オリンピックのように「参加する事に意義がある」という認識を参加者、提供側が持っている

等がありますが、今回は先に挙げた4つについて順を追って考えてゆきたいと思います。

まず今日は「アウトプットの場がない」という事についてお話しします。

私たちは、研修やセミナーに参加したり、本を読んだりしながら、知識を「インプット」しています。

ただし、「インプット」だけだと徐々に忘れてしまうのです。

なぜかと言うと人の記憶は、1時間で半分、1日で約7割近くも忘れるようにできています。

それは、脳の中にある「海馬」という部分が、忘れるという事に大きな役割を果たしているからです。

海馬の働きを簡単に言ってしまえば、「記憶の整理をする」こと。

私達は毎日膨大な量の情報を受け取っていますが、それを全て処理し、記憶することはできません。

なぜなら、キャパオーバーになってしまうからです。

そこで海馬が 「この情報は絶対に忘れないようにしよう」「これは忘れても生活にも支障がないから、デリートしよう」といったように、情報を「残す」「捨てる」を決めているのです。

「三日前の夕食に食べたものを思い出して」と言われてもなかなか思い出せないのはそういう理由があるからです。

したがって、学びを忘れないようにするには「この情報は大切である」と海馬に認識させることが大切です。

では、どうやって海馬に認識させるのか?ということですが、おすすめは「アウトプット」することです。

つまり、人に内容を話したり、説明したり、何かに書いたりすることです。

特に「話す、説明する」は「自分の耳」で自分が話した内容を聴く事になるので理解が深まり、学びを定着させるには最適です。

同じ内容のプレゼンテーションを何回もこなすとうまくなってゆくのはそういう理由があるからです。

さらに、アウトプットの機会を事前に予定しておくと効果が大きくなります。

例えば、授業で「今日は全員にあてるぞ!!」と先生が言ってから授業を行うと、生徒はいつもより授業に集中して、先生の話を聴こうとします。

なので、私の研修においてアクションプランの一項目を、「誰かに内容を15分で話す」にしているのは、参加者の脳に研修の学びを留めて「活きた知識」にする為です。

これは「研修」だけでなく、日々のOJTの中にも取り入れることができます。

何か新人に説明をした時に「わかった?」「はい」と言う「やりとり」で終わりにするのではなく、一旦説明した後に「じゃあ、何がわかったのか教えて」というリクエストを新人に投げてみてください。

最初は意表を突かれたような「えっ?」と言う反応をしますが、繰り返し、問い直しを続けてゆくと新人は、「また、説明しろって言われるな」と考え、説明できるようになるまで理解しょうとします。

また、それに伴い、新人から出てくる「質問のレベル」もどんどん向上してゆきます。

私がファミレスや中古のゴルフショップ時代に部下育成やアルバイト育成でよく使った「手」です。

最初は、部下を試すような感じがして抵抗を感じるかもしれませんが、成長スピードは圧倒的に早くなりますのでやる価値があります。

今日は、研修での学びを「意味あるものにする」ための第一歩として「アウトプットをさせる事」であるというお話をしました。

これは、すぐ現場でできる事なので、ぜひ実践していただけたら幸いです。

次回は研修の生産性を高める方法②として「アクションをフォーカスする」をおおくりいたします。