Z世代が使う「言葉の解像度」を上げる

前回、Z世代は「遊び」が足りないというお話をしました。
「遊び」とは一見、無駄に見える事ですが、今日は、その「遊び」がなぜ無くなったのか?
についてから、お話を始めたいと思います。

結論から言ってしまうと少子化の影響で子供達が「超過保護」に育てられたからだと私は思っています。つまり、自分で考え、解決するチャンスを親や学校が奪ってきたという事です。

別の言い方をすると親がいつまでも子離れできていないとも言えますし、子供達について言うと
精神的に自立できないまま青年期を迎えていると言えます。
典型的な例で言うと入社式です。最近は親が出席すると言うのが常識になっているようでこれは私の時代には考えられなかった事です。
更に言うと何処の会社に入るのか?についてのキャスティングボードさえも親が握っている状況なので会社側は採用内定者の親に内定承諾書をもらう「オヤカク」という手続きがマストになっています。
これは、「親の反対」によって内定辞退が増えているのが理由だそうです。

このように自分で考えなくても「親が考え、解決してくれる」ので子供たちは自分の人生について自分で考え、決断し、決断の責任は自分が取るという意識を持たなくなります。

さらに真偽は別として実際に自分で行動しなくても様々な情報がインターネットを通じて手に入るので自身の経験に裏打されていないもっともらしい情報に洗脳されてしまうのです。
「キャリア信仰」などはその最たるものです。

また、「少子化」によって売り手市場である事も彼らは当然分かっっていますので「周りが自分に合わせてくれる」のが当たり前と言う感覚で会社に乗り込んできます。
だから、厄介なのです。

では、そんな部下達をどのように育てたら良いか?と言う事ですが、まずやるべき事は以前お伝えした通り、「どうなりたいか?」を一緒に「言語化」できるまで深堀りしてあげる事だと思います。

一例をあげるなら、彼らが望んでいる「キャリアを積む」とは何か?と言う事を一緒に分解してあげる事です。
それは、一口にキャリアと言っても「何をもって」「キャリアを積む」という事になるのか明確に言語化されていないからです。
その証拠に「キャリアって何だと思う?」という質問を若手社員に問いかけてみてください。
恐らく、いや十中八九「なるほど!!」という答えは出てこないと思います。
いや、出てこないはずです。
なぜなら、それは彼らだけでなく私達が「答え」ではない「答え」を「答え」だと認識する習慣に
慣れているからです。

ややこしいですね。
簡単に言うと途中で考えるのをやめてしまっているのにそれに気づいていないという事です。

例えば「エンゲージメント」という言葉一つとっても「会社への帰属意識、貢献意欲でしょ」
というレベルで終わったら、エンゲージメントを向上させるために何をしたら良いか?は
本来明確になりません。

一口にエンゲージメントと言っても人によって、何がエンゲージメントに繋がるのかは一定ではありませんし、そもそも捉え方も違うはすです。

更に言うと会社の風土によっても違います。

したがって、すぐ処方箋を服用するのではなく、「うちの会社はこういう会社を目指すよ」という
軸を決めてから、どんな「エンゲージメント」を目指すのか?の「定義」を決め、構成する様々な「要素」を洗い出して、「優先順位」を決め、「最大公約数」的な所から取り組みを始めていかないと「エンゲージメント」形成には繋がらないのです。

単純に一般書籍に書いてあるような「仕事以外で付き合う機会が必要」「フラットなコミュニケーションが良い」などをそのまま鵜呑みにして

・BBQでも企画するか?
・言いたい事をつぶやけるアプリを入れるか?
・1on1やるか?
など

「こんな感じかな?」というおぼろげな仮説によって、取り組みを行なっても対処法的な取り組みでしかなく効果は薄くなってしまいます。

これについては長くなってしまうので別の機会にお話ししたいと思いますが、まずは「こうだよね」で何となく認識している言葉の解像度を上げる必要があります。
その中から、取り組みを考えていった方がはるかに、有効な取り組みになるからです。

話を「キャリア」に戻すと「キャリア」と言う事に対し、恐らく、彼らが望んでいるのは「この先、生きてゆく上で困らないような知識やスキル、経験を積む事」を指しているのではないかと思います。
端的に言うと自分の「価値」を上げてゆきたいという事です。
「価値」とは何か?と言うと一言で言うと「変化を起こす力」です。

例えば、大谷翔平の価値はチームにとっては、

彼が居る事で
「勝率が上がる」「他の選手に対し、良いお手本として刺激になる」「メディアの注目が集まる」
「スポンサーが増える」「ファンが増える」などでしょうし、広告媒体からすると「雑誌の販売数が増える」「視聴率が上がる」「CMスポンサーが増える」など、世間にとっては「元気がもらえる」「自分も頑張ろうという気持ちになる」「楽しみが増える」「野球小僧が増える」などの変化です。

このように人の価値は、その人が居る事でいない時と比べて何かしら、「良い変化」が起こる
事によって、認識されます。
こうして「キャリア」を「自分の価値を築く事」であると認識するならば、若手が見失っている事があります。

それは価値が「他者目線」で築かれるという事です。
つまり、周囲の人にどれだけ良い影響を与えられるか?と言う視点です。

言い方を変えると少なからず、周囲の人に良い影響を与えられないと「キャリアを積んだことには
ならないよ」と言っても良いと思います。

であれば、若手が「キャリアを積む」為に必要な事が見えてくるはずです。

価値向上を考える上で参考になるものに「成人発達理論」という考え方があります。
これは、人間の成長には「水平的成長」と「垂直的成長」の2軸があると言う考え方で水平的成長は知識やスキルを高める「量的」な成長をさし、垂直的成長は人としての器の拡大や人間性を深める「質的」な成長を意味します。

すごく、説得力がある考え方なので私は研修でも良く引用しています。

価値創造について考えると「量的」「質的」という二つの成長に向けて行動を起こしてゆく事とも言えるので「君が考えるキャリアは量的成長に偏っているんじゃない?」「成長には質的成長も必要なんだよ」と言う事を教えてあげれば良いわけです。

なぜなら、「困ったちゃん達」に欠けているのは質的成長の認識だからです。

分かりやすい例をPCで考えてみると量的成長は「アプリ」に該当し、質的成長は「OS」です。

つまり、PCはアプリばかり、新しいものをインストールしてもOSを更新していかなければ、上手く作動しません。

これと同じように「キャリア」もひたすら、知識やスキルを磨くという視点だけで捉えると本当の意味で人生を助けるキャリアにはならないと言う事です。

具体的に若手が身に付けるべき質的成長は

・自分の「モノの見方」だけでなく他者の「モノの見方」に目を向ける事
・周囲に協力し、助ける事
・自分から仕事を取りに行く姿勢
・失敗しても前を向いてゆくメンタル
・嫌な事も率先して引き受ける姿勢
・明るく、元気に挨拶できる事
・「ありがとうございます」をたくさん言える事
・積極的に学ぼうという姿勢
・自分の時間を使って勉強する事
・一見無駄だと思う仕事に「意味」を見いだす事
・・・・・・・
などです。

いずれにしてもこれらを彼らに伝える為にはかなり「言葉の量」が必要になります。

なぜなのか?についてはですが、それはある「理由」があります。
それを説明する上で「ヒット曲」と関連した非常に面白いお話がありますのでまた、改めてお話しします。