前回は義務感、強制感を感じる仕事の中で、その中に「個人の目的」を設定できるか?どうかが大切と言うお話をしました。
今回は目標の具体的明確化についてのお話です。
これは簡単に言うと「いつまでに、なにを、どのように、どのくらい、どうする」という事を決めるという事です。
こうやって書くと簡単に見えますが、日頃から「抽象」「曖昧」の世界にどっぷりつかっている我々には、具体的に決めるという事は意外と難しい事です。
また、「アクションプラン」のところでも振れますが、とにかく、私たちは「はっきりさせる」事が苦手な国民であり、「決める事」を嫌がります。
でも、ここで妥協してしまうと部下の成長も「曖昧」なものになってしまい、変化の少ない停滞した日常に陥ってしまいます。
目標はどうやって決める?
では、具体的に目標をいかに決めるのか?ですが、部下が描いた「理想の姿」「GOAL」を達成するための「要件定義」を考える事から始めると良いと思います。
理想像である「ありたい姿を実現している」将来の部下が持っているであろう「人格」「知識」「スキル」「経験」を考えるという事です。
そして、その「要件定義」と現状に至る「ギャップ」を埋めてゆく事で自身の成長に対する道筋が見えてきます。
そして、理想への「標」(しるべ)である「目標」を今見えている、頑張れば手が届く範囲で設定します。
例えば、プロ野球選手の例で例えてみたいと思います。(なんで?と言う突っ込みは置いておいて)
今年ロッテにドラフト3位で指名された新潟「日本文理高校」の「田中晴也」と言う選手がいます。
私が新潟出身なので注目している子なんですが、ドラフト指名された時にこのテーマに合った「発言」があったので「題材」として取り上げてみたいと思います。
田中選手は記者会見で「日本を代表する選手になりたい」という「ありたい姿」を掲げています。
もし、あなたが、田中選手のコーチだったら、どうやって、この選手の目標を設定させますか?
ここで、先ほどのプロセスを使って考えてみましょう。
以下、田中選手と目標設定の為にやる妄想対話です。
コーチ
いつ、そうなっていたいの?
田中選手
25歳(7年後)
コーチ
どうなっていたら「日本を代表する選手」と言えるの?
田中選手
22歳から3年連続「最多勝投手」になっている。
18勝以上を3年間続けている。
通算防御率が2点台。
WBCに日本代表の先発投手として参加し、チームを勝利に導いている。
最高速度160km/hを投げている。
次にメジャーに行くのは「田中」とメディアでも言われている。
子供達のなりたい野球選手1位になっている。
チームメイトから「認められる」存在である。
コーチ
実現するために必要な事は?
田中選手
年間を通じて安定した投球ができる「ボディ」。
わかっていても打てない「直球」(回転数2500以上)。
何があっても動じない「メンタル」。
けがをしない「柔軟性」「ケア」を極める。
好不調に関わらず、態度を変えず、ファンに接する姿勢。
変化球のバリエーションを5種類まで増やす。
いつも見られているという事を意識して、私生活が乱れないようにする。
すべての球種でいつでも「ストライク」が取れるようになる。
サポートスタッフに対する「感謝の気持ち」を忘れない。
ファンあっての自分である事を忘れない。
チームワークを良くする存在である。
バッター心理を理解し、裏をかけるようになる。
頭を使った投球術を身に付ける。
コーチ
そのために来年一年間はどんなことを目標にする?
田中選手
プロ野球選手としての基盤を創る。
一年間戦える体力とボディを手に入れる。
ストレートの球速と回転数を上げる。
怪我無く過ごす。
メンタルについての知識を学ぶ。
コーチ
具体的には?
田中選手
体脂肪率5%で体重95㎏を達成する(現状85㎏)。
メンタルトレーニングの本を10冊読む。
年間で1200㎞走る。
股割りができるようになる※前屈や他の柔軟目標を別途細かく設定。
最高球速を5km/hアップする(155km/h)。
毎日気づいた事振り返り、記録する。
という具合です。
「ありたい姿」からそれが達成される為の条件を決め、短期の目標にする。
こうすると「遠くに見える未来」に向かう道筋が見えてきて、部下自身も自分の成長を図る事が出来ます。
ありたい姿や目標は変えちゃいけない?
良く研修で、「一度決めた」「ありたい姿」や「目標」は変えてはいけないのか?という質問をうけます。
ありたい姿や目標達成に向けて活動している中で、違う課題が見えたり、もっと、やりたい事が出てくることがあります。
それでも「一度決めた」ことはやり続けた方が良いのか?ということですが、私は変えても良いと思います。
なぜなら、未来のことなど簡単に答えが出るものではありませんし、最初に立てた目標に「苦しさ」を感じたり、「義務感」しか感じなくなるようでしたら、そもそも本末転倒だからです。
大切なのは、しっくりくる「未来」を見つける為の自己探求をし続ける事、そして、そこに向かって「目標」設定をして挑み続ける事です。
「未来の奴隷」になる事ではなく、「理想の未来を更新」して「今を活性化し続ける」事です。
上司としては「コロコロ変えやがって」と思う事もあるかもしれませんが、繰り返し、繰り返し「苦悶」する中で本当に望んでいる事が見えてくるはずです。
なので、部下の「成長へのもがき」を「否定」「避難」することなく「俯瞰して見守ってあげてください。
「自分で見つけ出すこと」が何より、「大切」な事だからです。
今日は具体的な目標設定について取り上げました。
次回は目標を達成するための「スモールステップ」について考えてみたいと思います。